明朝

全、きみに告ぐ

掬い上げる朝

友人がブログとTwitterを消した。人はこうやって今まで縫ってきた糸を玉留めするんだなあ、と思った。彼にとっての何かが達成され、あるいは完成したのかもしれない。何者でもなかった私の言葉と存在に興味を持ってくれた人だった。ある日。タイムラインに赤い血が流れた。ぼくらは社会に遍くある悲しみを目にし、疑問と感情のありかを見つけられない無力感に頭を抱えていた。散歩に出るとき、あなたは決まってコンビニで缶のお酒を買った。いつもと同じ、そんな早朝の散歩道。君の歩く道に通りすがった見知らぬおばあさんが「おはようございます」と小さな声で言った。それは今日を生きる人の確かな声であり、心と身体の緊張を解くような一言だった。忘れていたけれど、人は暖かかった。君の声がほころぶ瞬間、朝は桜色に染まった。たった一言に救われたあの朝の一瞬を忘れることはないと思う。ぼくらに繁栄がありますように。あのときのおばあさんが一日でも長く健やかでありますように。いつの日かあなたが、中央線に乗ることを怖がらずにすむ日が訪れますように。