明朝

全、きみに告ぐ

柳美里『JR上野駅公園口』(2021年5月1日、読了)


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柳美里『JR上野駅公園口』河出文庫、2017年

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・内容(河出書房新社ホームページより)

一九三三年、私は「天皇」と同じ日に生まれた――東京オリンピックの前年、出稼ぎのため上野駅に降り立った男の壮絶な生涯を通じ描かれる、日本の光と闇……居場所を失くしたすべての人へ贈る物語。

【全米図書賞・翻訳文学部門 受賞作】

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宮下公園、中央公園北口、高校のころに話を聞きに行ったホームレスの支援団体、屋島で観た無声映画「子宝騒動」、昨年の春に行った東京大空襲・戦災資料センター、横網町公園、西成の街、4車線を隔て天皇皇后両陛下へと手を振りカメラを向ける自分の姿、祖父母の死。いくつものことを反復し思い返した。

忘れないでいようと力を込めるだけでなく、盆に悼み迎えるだけでなく、食べるものを作るように着たものを洗うように、当たり前に死者と今日をともに生きることが生者である私たちが持つ役割の一つなのだと思った。

『飼う人』に続いて2冊目に読んだ柳美里作品だった。『フルハウス』が本棚にあったはずなので時を見つけて読みたいと思う。


2021年3月11日の日記を下に転記。

2021年3月11日(木)

昼寝して、電車へ乗って大学へ行った。
面談を終えて建物を出るとちょうど14:40ごろだった。
中庭のベンチに座り、Bluetoothイヤホンの片耳をつめこんだ。
動画サイトの生配信につなぎ、追悼式の様子を見た。
14:46の時報とともに、目を閉じて黙祷をした。
辺りは静かだった。
時計の針の音が聞こえた気がした。
本当に聞こえていたのかもしれない。
遠くのベンチで談笑する学生の声も聞こえた。
目を開けると、まるで気づいていなかった涙がこぼれた。
キャリーケースを引き大きなリュックを背負った新入生が隣を通る。
南国とて、春の風はやや肌寒い。
「誰一人取り残されることなく」という言葉が耳に残っている。
福島では今も2000人あまりの人びとが仮設住宅に避難し暮らしている。